世界遺産東寺へ 西国街道その4

西国街道は古くは奈良や京都といった都と西国との間の官人の往来や中国大陸や朝鮮半島からの使者の来訪、都造営の資材運搬、租庸調といった納税に利用されていた。戦国時代では軍の移動、豊臣秀吉の朝鮮出兵、西国の大名の参勤交代などでこの道が使われていた。時代とともに一般民衆も物見遊山で利用するようになり、物資の運搬、租税の徴収、文化交流など重要な役割を持つ街道であった。徳川幕府は江戸を中心とする世の中を構築したため、交通体系も江戸中心となり東西の本街道は東海道と大坂を起点とする中国道となった。そのため西国街道は格下げされ脇街道となってしまうが、現実的には大坂や京都を経由せずに最短ルートで江戸や東国に向かえるため、参勤交代や一般の人々も大いに利用されていた。幕末となるとさらに往来が激しくなり、禁門の変(蛤御門の変)や鳥羽伏見の戦など軍事的な重要性が高まっていく。しかし明治期となると参勤交代が無くなり交通量が激減する。また、文明開化によって乗合馬車や人力車、そして自動車や鉄道の開通により交通手段が大きく変わっていく。ついには交通量の増大により街道に並行し国道171号線が開通し、西国街道の役割は生活道路となった。途切れ途切れとなった街道沿いには田畑が姿を消し新興住宅が建ち並んでいる。しかし沿道には旧家や古民家、寺社仏閣、道標が点在しており所々に昔の雰囲気を残している。

京都府乙訓群大山崎町尻江 ~ 京都府長岡京市一文橋

グーグルマップ。

時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」 明治42年測図の地図

調子八角の交差点からほどなく進むと左手に標石を見つけ止まる。「右よど」とある。向かいには中野家住宅。江戸末期の建物で、白漆喰と虫籠窓が良い風情である。母屋と土蔵、茶室が国登録有形文化財に登録されている。

その先に立命館高校がある。若者が走っているグラウンドは緑の芝生と相まって、とてもまぶしく見えた。一旦、新西国街道に合流するがすぐ分かれる。

ふと商店の店先に視線が行き、ゆで卵の文字が目に留まった。自転車は前に進み、すでにその文字は、はるか後方に流されている。しかし気になる。よし戻ろう。自転車をUターンさせる。米田鶏卵店という、たまご屋さんだった。ゆで玉子3個100円、だし巻き1本500円、たまご1パック250円。

気の良い店員から、ゆで卵を3個いただく。ゆでたての卵にあら塩がたっぷり付いている。京都に着いたら食べよう。

この先、旧西国街道は石畳の神足商店街となる。頭上に神足商店街と赤文字で書かれた看板が横断している。

神足商店街とあるが、商店はまばらで古民家を改装した甘味処や、趣のある旧家が点在していて雰囲気は良い。食べ歩きの店や古民家カフェ、みやげ物屋などもっとあれば観光地となりそうな通りだ。

趣きのある旧街道、しかしスーパーマーケット平和堂の四角いビルが出現し、台無しとなる。旧街道沿いにビルを建てるのはやめて欲しいと切に願う。がっかりしながら先へ進む。

平和堂のビルにガッカリするも、しかし、ヘチマや朝顔の緑のカーテンで夏の日差し対策をしている古民家を見つけ、気を取り直す。ここまで1kmほど石畳の道が続き、新西国街道に合流する。

ここからしばらく善峰川の土手沿いとなるが、定食屋のある土手下の小道を行く。

この通りも一昔前の風情を残している。

京都府長岡京市一文橋 ~ 京都府向日市梅木

グーグルマップ。田畑が徐々に住宅地に変わっていくサマがよく分かる地域だ。

時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」 明治42年測図の地図

日本で最初の有料の橋「一文橋」を渡ると、前方に杉の木が数本並んで立っている。

交差点を渡り、ガソリンスタンドの脇道が旧西国街道である。ここから石畳の道となり、旧家が点在している。街道の両側に旧家があるとタイムスリップしたかのようだ。灯篭が適当な間隔で並んでいて、灯りのともった夜の情景を想像する。

阪急京都線と西新道を斜めに横切り、その先も両端が石畳となった道が続く。

ほどよい坂道となり、赤い鳥居が三つ並んだ社を見つけた。鈴吉大明神とある。こういうデザインの鳥居は京都っぽいなと感じる。

五辻交差点から先は向日市商店街となり、こちらの商店街も頭上に看板が横断している。けっこう交通量の多い2車線道路で、別名アストロ通りと呼ばれているらしい。京野菜を売っている店や和菓子の店が京都らしさを感じる。ふたたび頭上に商店街の看板が現われ、右に進路をとる。

しばらく住宅の町並みを走ると、植物とコーヒーとサンドの店という名の喫茶店を見つけた。氷と書かれた手作りの札が風に揺れ、名前の通り表には植物がたくさん並んでいる。中に可愛らしい女性の店員さんが見え、立ち寄りたくなるが、コーヒーが飲めない口なので、後ろ髪を引かれながらも先に進む。

軒下につられた風鈴が耳に心地良い和菓子屋さんには、わらびもちが売られている。

町並みになじんだ石灯篭やお地蔵様、重厚な門構えのお宅など、この通りは今と昔が上手く融合していて良い雰囲気だ。そしてまた頭上に商店街の看板が現われた。この辺は、こういう頭上看板が流行っているのか。

阪急の踏切を渡りJR向日町駅を目指す。